ヤバい時こそ、そこにある「前提」を見直すことから

サービス業に携わっている方々の中でも特に販売や営業となれば「売上」「数字」には敏感になりますね。日々、業績の進捗とにらめっこしながら「このままのペースでは…」と月末や期末の結果を予想し、焦っている状況はいつものことかもしれません。

販売店のリーダーやマネージャークラスとカウンセリングセッションをする時も、必ずこの悩みはついて回ります。

「このままでは目標をクリアできそうもない」「業績が上がらない」のはなぜか?きっといつも原因を考えておられると思いますが、ほとんどの方がその答えにたどり着けずに「今月も達成できなかった」という結末を迎えます。一体、何が足りないのか?それはよく言われるところの”メンバーの危機感”なのでしょうか?

特に、焦り追い詰められているときほど”答え”を早く見つけたくなりますが、そのためにももう少し視野を広げて考えてみませんか?

人を焦らせる、ひとつの重大な要因

もちろん成果が付いてきていないから焦るのですが、それはつまり結果論でしかありません。実は、原因を究明したり、その対策を打つ時、結果論で考えるというのは一番やってはいけないことです。

どうして焦っているのか?を考える時、カウンセリングではいろんな角度からその焦りを一緒に分析し掘り下げて考えてみるのですが、焦ったり悩んでいる時には、ある思考に囚われている人がとても多いです。

それが『できない状態がデフォルトである』という前提です。
絶対に達成したいと思っている、というのは裏を返すと「今は達成できていない(だから達成は難しい)」ということを強調しているとも言えるのです。

「売りたいのに売れない」「結果がほしいのに出せない」
こんな風に”そうしたい”と思う気持ちがあるのに、実は「そうならないのがデフォルト」という前提を持っている状態は、気持ちのベクトルが正反対、向いている方向が真逆です。頭の中で両方が共存していてはうまくいくはずがないんですね。

デフォルト、つまり「当たり前」と思い込んでいる前提は、意識的に変えることができます。
私が営業時代にそれを痛感した、ある事例を参考にしながらお伝えしたいと思います。

常に「できる状態」を意識させる工夫

不動産屋さんは「長期空き家」と呼ばれるなかなか入居者が決まらない部屋を必ず持っています。立地やニーズの相違、空室になった時期、築年数やメンテナンス状態など、いろんな理由があってなかなか入居が決まらない物件です。

当時の私の上司はこれをどうしても改善したいと思って考え、長期空き家の玄関先にカルガモのぬいぐるみを置いてくるよう指示しました。それを「かるがも物件」と呼び、「カルガモのいる部屋は今月中に必ず決める」と、私たちに意識をさせるためです。

ただ、置いてくるだけです。玄関の下駄箱の上に、ひっそりと。
ですが、この効果が絶大でした。

上司は、ことあるごとに「今月のカルガモはどこだっけ?」と私に聞いてきます。答えるたびに私は、玄関に置いてきたぬいぐるみの姿が頭に浮かんできて、「あの部屋は今月中に決めなきゃ」という思いが甦ります。

「今月中に決める」という意識から、その物件をお客様にご紹介する頻度が上がります。つまり、行動が変わる。その結果、入居が決まるんですよね。

これを毎月毎月繰り返していると「カルガモを置いた部屋は決まる」というジンクスのようなものが自然にできあがります。感覚としては、どんなに長期間空き家になっていても「カルガモを置けば入居が決まるのが当たり前(デフォルト)」という意識になってくるのです。

不思議に思いますか?

頭の中に常に「カルガモ=長期空き家」を意識させるわけですね。するとその意識は行動を変え、その結果、今まで入居が決まらなかった部屋に申込みが入ります。その状態が反復されると「この部屋は長期間空いているから決まるはずがない」という意識から「入居が決まるのが当たり前」という意識に変わっていく。

思考は現実化する、という格言の体現なのだと思います。

この感覚が「できない状態」への意識を助長する

「あそこは○○(もっともらしい理由)だから決まるわけがない」と思い込んで、いつまで経っても入居者が決まらない長期空き家と同じように、「自分たちは○○(もっともらしい理由)だから結果が出るわけがない」と思い込んでしまっていれば、結果は出なくて当然です。

自分としてはそんな風に思い込んでいる感覚がなかったとしても、ふとした拍子に「いや、そうは言っても…」という考えが浮かぶならば、持っている前提としては「結果が出るわけがない」というのと同じです。たとえばそれは業績の進捗を見て「このままのペースでは達成できない」と感じた時などにも起こる感覚かもしれません。

状況を変えるためには行動を変えないといけないというのは、誰でも頭ではわかっています。ですがこの前提を持ったまま行動を変えようとするとどうなるか?というと、冒頭でもお話しした「危機感を煽る」という選択になりがちです。

「足りない」ということを意識させるために、インセンティブをつけてみたり、競争をさせてみたり。あるいは攻撃的にできていない結果を見せつけて詰問しはじめたり、逆にそれを隠そうとして感情が抑えられなくなったり…本当にひとつも良いことがないので、今すぐにやめましょう。

結局「できない(できていない)状態」を強調するだけなのです。

パフォーマンスを上げるための前提とは?

状況を変える(好転させる)ための行動とは、パフォーマンスを上げることです。先ほどの不動産の例で言うならば、長期空き家に入居を決めるには、その物件を紹介する頻度や精度を上げることが必要でした。

パフォーマンスを上げるのに「できない状態」を意識させるのは得策でしょうか?
その意識はゆくゆく”できていないからやらなきゃいけない”という意識に変わり、行動にブレーキがかかって”やらなきゃいけないけどできない”というループにハマっていきます。これでは今までの「達成できませんでした」という結果となんら変わりがありません。

「できない」という意識は実は、できないのままでいる方が楽だったり、安心なのかもしれない…ということもあります。

どうせ思い込むのならば、「何があっても絶対にできる」「こんな風に指示してもスタッフはついてきてくれるはず」と思い込みましょう。カルガモのぬいぐるみのように、頭の中に常にインプットできるようなマスコット的なアイテムを使うのも効果的ですよ。

 

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人材育成のコンサルティングプログラムとしてご提供している、集合研修や養成講座・キャリアカウンセリングセッションに特化した記事を書いています。 中の人はキャリアコンサルタント。スタッフは心理系有資格者・大学心理学部専攻者・営業経験者など。人と向き合うことを長年考え続け、学び続けているプロです。 モチベーションやパフォーマンスを上げて、もっと自分らしく働くためのヒントを拾ってもらえたら嬉しいです。